カテゴリー「書籍・雑誌」の記事

2008年6月20日 (金)

演劇の力

友人が貸してくれた「名セリフ!」(鴻上尚史著、文藝春秋刊、2004年)。洋の東西を問わず、さまざまな芝居から鴻上さんがコレと思ったセリフを鴻上さんの切り口で紹介している。
その中の一節に語られているエピソードは、私が見た芝居にまつわるものだったので、以下、鴻上さんの受け売りでご紹介する。
民間と違って官の劇場というのは、非常に制約が多い。なぜなら、演劇が好きで公立の劇場・ホール勤務になった人は少なく、自分の勤務中は何の問題もなく終わらせたいと願っている場合が多い。したがって、制約だらけになる。舞台に傷がつくのを神経質に気にする(だから釘1本打てない)、時間きっちりに電源を落とす、客席に下りての演技は前例がないから認めない。鴻上さんはそういう劇場と常に戦い続けている。
ところが、ある地方で、とても協力的なスタッフと出会った。演劇人は新しいこと、すなわち前例のないことをやりたがる、するとスタッフとモメがちになる、しかしそこでは演劇を尊重しているように思われた。感動した鴻上さんは理由を聞いた。
先日、この小屋である芝居を見たんです。ほとんどの者は劇場でちゃんと芝居を見るのは初めてでした。それがとても感動的で、以来この劇場のスタッフは演劇を大切にしようと思ったんです。
なんというお芝居だったんですか?
「父と暮らせば」というお芝居です。

「…僕が、演劇の力を信じてもいいと思うのは、たとえばこんな瞬間です。」

鴻上さんは、こう結んでいる。

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2007年10月 4日 (木)

温かい哀しみ:「ブラフマンの埋葬」

やっと電車の中で本が読めそうな余裕ができたので、机に積んである文庫たちの中から一番文字数の少ない「ブラフマンの埋葬」を選び、4回の乗車で完読した。

小川洋子さんの本はこれも含めて2冊しか読んだことはない。「ブラフマン」は、以前にmamiさんが感想を書いていらしたのを見て、どうせツンドクくせにな~と自嘲しながらも早速購入したもので、そのときはまだ「博士」も読みきっていなかったから、まず先にそちらを読んだ。

2冊を読んだだけではあるが、小川さんの文体は1人称でありながら感情に溺れることがない。どこかで<><>を見ている別の視点があるような感じがする。もしかすると、その視点は<哀しみ>という視点かもしれない。静かに淡々と、しかし温かく描かれる博士やブラフマンとの日常の中に、常に哀しみが潜んでいるような気がするのだ。哀しみの感情が表に現れるときでさえ、淡々としたその筆致は変化することなく、それが逆にストレートに、しかし突き刺すのではなしに、徐々に心に染み渡ってくる。涙が出るのとは違う。温かい哀しみとでもいおうか、そういうものに包まれる。

小さなブラフマンに寄せる<>の思いは、私もサンタという名の小さなシーズーと生活していたからよくわかる。ブラフマンの仕草や行動がサンタに重なり、何度微笑みそうになったことか(電車の中だから、一応)。

いい本に出会えたな、そんな感じである。
071004santa

昨日の続き:久々の朝陽の中で見る部屋は、埃やゴミが目立ちすぎ、一昨日掃除したばっかりなのに、ついつい今日も雑巾掛けしてしまった。

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2007年5月21日 (月)

つんどく

浅田次郎の「憑神」の文庫が出たので買った。1冊だけっていうのもなんだなあ、と思い浅田次郎をもう2冊買った。買っておきながら、これもまた<つんどく>だな、と心の中でつぶやく。
私は自分で買う本はほとんどが文庫か新書、あるいはせいぜいムックだ(ハードカバーは高いし扱いづらいから、必要があれば図書館で借りる)。本屋へ行けば面白そうな文庫や新書を漁り、またアマゾンでも1冊ではもったいないからもちろん読む意欲満々で数冊買うのだが、まずは買ってから読み始めるまでに何週間もかかるし、読みかけてその辺に置いた本は、だらしがないからどこかに消えてしまって、仕方ないから別の本を読み始める。一気に読み上げればいいものを、なかなか時間が取れず、それなら電車で読もうとすると先に眠くなる。
風呂で読むことも間々あるが、やっぱりそれは冬場になる。それに、浴室に持ち込む本は、ふやけてもいいものに限られる。いつぞやは、うっかり浴槽に落としてしまい、慌てて引き上げたときにはたっぷり水を吸ってぶくぶくにふくれていた。乾かしても汚らしいだけで、私は本が汚れるのはとても嫌うし、本は私にとってどんなものでも大事で、たまたまほとんど頭休め用に求めた本ではあるものの非常に複雑な気分であった。
先日は図書館で2冊借りたが、うち1冊(「ザ・対決」)は手付かず、もう1冊(「色のない島へ」)は半分ほど読んだところで、返却期限を2週間もオーバーしていることにさすがに気がひけ、とりあえず返してしまった。科学と旅行記が一緒になったような内容で、翻訳もこういうものにしてはいい感じだし面白い。読み始めれば快調に読めるのだが、何しろ字数もページ数も多くて……。今取り掛かっている大仕事が終わったら、2冊とももう一度借りて、最優先で読破するつもり。
とまあ、こんなことを繰り返しているうちに、買ってきて袋から出しもせずに放り出してある本もだんだん増えてきた。又足の踏み場が怪しくなってきたのでちょっと整理したら、出てきた読みかけの本も含めて、10何冊かが仕事場に、そして寝室には「演劇界」だの歌舞伎筋書きだの映画プログラムだの数冊が放り出してあった。
とりあえず、今積んである本は「博士の愛した数式」(小川洋子)、「あかんべえ上下」(宮部みゆき)、「紅蓮のくちづけ」(深山くのえ、染・愛のBLのコラボ本)、「江戸の満腹力」(細谷正充編、時代小説のアンソロジー)、「フェルメール全点踏破の旅」(朽木ゆり子)、「エミールと三人のふたご」「点子ちゃんとアントン」(以上ケストナー)、「算法少女」(遠藤寛子)、「タモリのTOKYO坂道美学入門」、「日本の“珍々”踏切」、「地図を探偵する」、そしてこれに新たに浅田次郎「憑神」「珍妃の井戸」「日輪の遺産」が加わった。本棚にしまっておけばいいようなものだが、すぐ手に取れるようにしておきたいのである。でも、さすがに読まれるのを待っている本たちを見ると、ため息が出る。
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追記:mamiさんのところで「ブラフマンの埋葬」(小川洋子)、kirigirisuさんのところで密命シリーズ(佐伯泰英)が紹介されている。こんなに積んであるのに、また食指が動きかけている私…。そういえば、「色のない島へ」も「ザ・対決」もurasimaruさんのところで教えていただいたのでした。

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