録画だけしておいて後でゆっくり見るつもりだった、20年前(正確には19年前かな)の俳優祭。ちょっと気になって録画中の画面を出しちゃったのがマズイ。昨年運よくその場にいられた俳優祭の思い出が甦ってくるとともに、あまりの面白さに仕事そっちのけで見入ってしまった。歌舞伎チャンネルに加入している方は絶対お見逃しなく。以下ネタバレします。
まずは模擬店。團十郎さんはお寿司屋、八十助(現・三津五郎)さんはテレカ(今となっては懐かしいテレカよ)、猿之助さんがオークションの司会、福引は段四郎さん。雀右衛門さんのスナック、信二郎(錦之助)さんの水割り、我當さん・進之介さん親子の飴、秀太郎さんの蕎麦、みんな楽しそうにお店の主人を務めている。次のお芝居のプロローグに出演される役者さんはそのコスチュームをつけたまま汗だくでお店に立っていたが、勘九郎(勘三郎)さんはイヤリングをさかんに痛い痛いと言っておられた。私もイヤリングを長時間することはできないので、よくわかる。右近さんは歌江さんたちとバラエティーコーナー、顔を真っ黒く塗りサングラスをかけていたが、この後の芝居で真っ先に登場するのだ。よくメークが間に合ったものだ。
しかし20年という歳月は重い、とも思う。羽左衛門さん、宗十郎さん、亀鶴さん(初代)、菊蔵さんといった、今は亡き方たちのお顔も見える。最近お見かけしない藤十郎(澤村)さん、半四郎さんのお元気な姿が嬉しい。
何しろ、平成元年だからみ~んな若い。いや、若いを通り越してまだまだお子ちゃまなのがお馴染みの可愛い半ズボン姿の勘太郎・七之助クン。ハンカチ・千代紙売り場の亀寿さんは小学5年生。基本的に変わってないなあ。おでん屋、左近時代の松緑さんは中学生だろうか、こちらも今とほとんど同じお顔で初々しさが感じられる。
模擬店の総支配人は孝夫時代の仁左様♡♡。
さて、演し物は「歌舞伎ワラエティ~仏国宮殿薔薇譚(べるさいゆばらのよばなし)」。猿之助さん構成・演出のめっちゃ楽しい歌舞伎版ベルばらである。プロローグは小公子・右近さんの歌で始まる。後ろに小公女6人(信二郎、京妙、笑也他)を従え、気持ちよさそうに歌い踊る。アンドレ役でも登場する右近さん、さすがの美声だ。オスカルとのデュエットシーンでは乗りに乗って、しまいには演歌の血が騒ぐとかで、思い切りこぶしをきかせたりするから、私はけらけら笑い転げてしまった。
革命前のパーティーの夜、華やかな貴族の夫人たちがオペラ座に集まる。猿之助さんのエンデブ侯爵夫人(猿でぶっていう意味らしい)、勘九郎さんのカンクルウ公爵夫人のほか(この2人がうまいのよ、また!!)、女方といえば「身替坐禅」の奥方が定番といった感じの役者さんたちが、美しい女性ぶりを披露するのが珍しい。左団次さんのデカサダンジ公爵夫人、段四郎さんのダンシロフ侯爵夫人、弥十郎さんのヤジューノッポ伯爵夫人。宝塚風の化粧がよくお似合い。段四郎さんは、この日のために胸毛を剃ってきました、って、あら段四郎さん胸毛があったんだ。
エンデブ夫人がパートナーとして連れてきたのがオトワーヤ王子(菊五郎さん)。名古屋弁でカンクルウ夫人と遣り合って笑わせたかと思うと突然モードチェンジ、黙阿弥調で「晦日に月の出るパリも闇があるから覚えていろ」。これにはエンデブ夫人がさかんに「ブラボーブラボー」。
そこへ国王夫妻が登場し、ここからストーリーが展開する。
以下、主な配役(敬称略)。
オスカル:児太郎(福助)
アンドレ:右近
アラン:歌六
ベルナール:門之助(多分、先代)
フェルゼン:澤村宗十郎
ブイエ将軍:澤村藤十郎
マリー・アントワネット:雀右衛門
ルイ16世:團十郎
福助さんは歌舞伎会随一の宝塚通なんだそうだ。本当に宝塚の男役みたいでカッコいい(ちょっと、小林幸子入ってたけど)。宗十郎さんの芝居は直接見たことはないけれど、ユーモアたっぷりで、アドリブなのか台本どおりなのか、セリフを忘れて猿之助さんに教えてもらったりする遣り取りがあまりに可笑しく、ここでもあははは笑ってしまった。このフェルゼンにマリー・アントワネットもオスカルも恋心を抱くのだから、まったく~。
セリフを忘れるといえば、福助さんも忘れて右近さんに「君のセリフだよ」なんて言われて、そのすぐ後には右近さんが突然高笑いを始め「今度は僕が忘れてしまった。師匠にセリフがわからなくなったときは笑っていればいいと教わったんだ」って。涙が出るほど笑っちゃったよ。
マリー・アントワネットの雀右衛門さん、私が知っている雀右衛門さんはもう、ほとんど動きも少なく声も小さくなってからだが、20年前の雀右衛門さんの美しく軽やかなこと。真っ赤なドレスで踊るフラメンコみたいな踊りは見ものである。
團十郎さんはマリー・アントワネットをエスコートして花道から登場、セリフをいくつか言っただけで、あとは引っ込んでしまわれた。
意外といっては失礼だが、ステキだったのが歌六さん。アランもよかったけれど、宝塚男役的ショートヘア(ヘアバンドをしている)、赤いシャツ、黒いズボンでバラのタンゴを踊るフィナーレの歌六さんは、見栄えも素晴らしく、踊りも上手で、本当にカッコいい。思わず見とれてしまう。もっと見ていた~い。
西洋コスプレ、宝塚のパロディー(セリフや動きをオーバーに)、そこへ歌舞伎調のセリフや動きをミックスさせて、そのギャップがすごく可笑しいのに、違和感を感じない。猿之助さんの、お客様を楽しませる芝居を、という精神がたっぷり詰まった一夜のワラエティー(ネーミングもいいよね)、歌舞伎座で実際にご覧になった方が羨ましい。
んで、あまりに浮かれすぎて、豆まきするの忘れました。鬼がみんなうちに来ちゃったかな (^-^;。
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