カテゴリー「展覧会」の記事

2007年10月17日 (水)

伝統芸能の顔

今月3日から国立劇場伝統芸能情報館で「伝統芸能の顔」という展覧会が開かれている。ということは、昨日国立劇場に足を運んで知った。で、歌舞伎の後、ちょっと寄ってみた。

翁から始まって各種能面が展示され、角度などによってそれぞれの表情がこう変わるというのも示されていた。ふむふむと感心したが、私は能にはあまり興味がないので、そこはさっとすまして次は文楽の頭へ。

文楽は実際には見たことがないのだが、頭のできるまでの工程は興味深かった。素材は木曽ヒノキで、木取り(元の木から頭の大きさに合わせて木を切る)、下絵、荒彫りなどはよくわかる作業だが、ちょっと驚いたのは耳の前で頭を2つに割り、中を刳りぬくという工程。考えてみれば確かに仕掛けなどを組み込まなくてはいけないのだから当然の作業なのだが、改めて割ったところを見せられると、ほほ~と納得した。中の仕掛けにはクジラのひげを使うんだそうだ。

歌舞伎からは隈取り。嬉しいことに故尾上松助さんのお顔(松也クンにほとんど似ていないような、ちょっとは似ているような)に20種類の隈が描かれている。ああ、これは土蜘の隈、これは時平の隈、などと、舞台を思い出しながら楽しめる。その隈の下には、役者さんの使う化粧道具がたくさん。確か梅之さんが前に、役に合わせて砥の粉と白粉の配分を変えるのだが、他の同じ役の方々と顔色を揃えるのがむずかしいというような苦労話を書いておられたな、などと思い出した(0759)。これだけ色々塗ったらお肌に悪そう…。その隣には鏡台が置かれている。5代目嵐璃寛さんという人のものだそうだ。

さらには貴重な押隈が。明治204月市村座「国性爺合戦」和藤内の隈で、現存する日本最古の押隈だとされているらしい。他にも垂涎ものの押隈が展示されている。

さらに進むと、狂言「靫猿」の子猿の面。野村萬斎さんの息子さんが使ったものだ(ったと思う。メモしてこなかったので、自信はない。ただ、この面を目にしたたとき、いつかNHKのドキュメンタリーで見た萬斎さんと息子さんの姿が目に浮かんだから、そう記憶しているだけかも。萬斎さんが息子さんに初舞台を踏ませるまでの軌跡を追ったあの番組はよかったなあ)。

それから孫悟空、猪八戒、沙悟浄の文楽面、雅楽の面と衣裳。衣裳は、能も歌舞伎も1着ずつ出ていた。歌舞伎は「寿曽我対面」から五郎の衣裳。

これ、来年127日までやっているから、又見に行けそう。

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2007年4月28日 (土)

胸の熱くなるpetit prince

426日 星の王子さま展(銀座松屋8階)
松屋でこういう催しがあると、なぜか必ず招待状が送られてくる。今回は大好きな星の王子さまだから、喜んで出かけた。
「星の王子さま」が語りかけてくる言葉をいくつかとりあげて、そこにこめられた意味が解説されていたり、サンテックス(サン・テグジュペリのこと)自身が描いたいろいろなデッサン、不遇の友人レオン・ウォルトへの絵入り手紙(これが胸を打つ)、「The Little Prince」の初版本(英語のほうが先に出版されたんだって、知らなかった)、それから初版本と同じであることから自筆と確認された実業屋の原画(日本で発見された「幻の原画」なんだそうだ)などが展示されていた。
内藤濯さんのコーナーもあり、最初は他の人が翻訳するはずだったが、その人が「この作品には、音で文を作る内藤さんがふさわしい」といって内藤さんが手がけることになったのだそうだ。私は翻訳本は読んでいないので何とも言えないが、原作も口述筆記だったそうで、だからこそ音に出して読むリズムが大切にされており、日本語もそれをそのまま踏まえたほうがいいという判断だったのだろう。内藤さんが主宰されていた「星の王子の会」(だったか、なんだったか忘れたが、勉強会のようなものらしい)には美智子皇后も参加されていたということだ。内藤さんの和歌に美智子皇后が曲をつけていらっしゃる、その楽譜もあった。
ミュージカルで使われた衣裳のコーナーではビデオも流れており、私が見たのとは違うものだったが、あの時の熱い気持ちが甦ってきた。
見るだけでなく、ちょっと参加型っていうようなものもある。たとえば有名なうわばみの絵の中に、うわばみに呑まれた象の姿が見えたり、飛行士が描いた箱の中に羊が見える仕掛けは、ごく他愛もなくて単純なんだけど、王子様と飛行士の気持ちが思い起こされてちょっと切なくなった。
体験コーナーみたいなのが
2カ所あり、ひとつは王子様と空を歩こう、っていうようなもの。壁と薄いシースルーの布に区切られた細い通路を仕掛けのあるボールを高く掲げて持って歩くとそのボールに光が集まって、布に描かれた鳥たちが一緒になって空の散歩をしてくれる。肝心の王子様は一緒だったのかな、よくわからなかった。外側からも見えるのだが、中を歩くとと~っても幻想的で、これをやった人はみんなきらきらと目を輝かせていた。もう1カ所は、王子様の星が映ったスクリーンに向かって手を高くあげ左右に交差させると、天井に無数の星が瞬くというもの。これも他愛はないが、美しい満天の星を独り占めしたようで嬉しくなる。
最後は、アニメ上映。朗読(要するに声ね)は岸田今日子、名古屋章など。そしてその脇に世界各国で出版されている本がずら~っと並べられている。アフリカの聞いたことのないような言語にも訳されているのには感動した。
展示を見ると、「星の王子さま」に書かれた一言一言が、どんなに深い意味をもっているのか、サンテックスの思いがどんなにこめられているのか、改めて心に響いてくる。この本を読んだとき、作者自身のことはあまり考えなかったのだが、今もサハラ砂漠のどこかで眠っているであろうサンテックスという人の温かくやわらかい心がじわ~っと胸にしみこんできて、ああ、私は「星の王子さま」のお話が大好きだと、また気持ちが熱くなるのであった。
デパートでのこういう展示には珍しく、カタログを販売していたが、やはり人気が高いのだろう、売り切れで予約注文になっていた。展示場の外にはグッズがたくさん置いてあり、もうどれもこれも欲しくて、たとえばTシャツなんかどのデザイン、どの色でも1着ずつ欲しい。で、決めかねているうちに時間がなくなり、結局なんにも買わなかった。全部欲しいときには一つも買わないのが正解かもしれない。

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2007年3月25日 (日)

パリの歌舞伎衣裳

3月24日 歌舞伎衣裳展(パリ三越エスパス・デザール)

パリはずっと天気が悪く、22日夕方晴れ間が出て期待をもったら23日はまた曇り時々小雨。そして24日は朝から小雨。夕方にはかなりまともに降ってきた。雨だからよけい寒い。娘が言うには、1月からずっとこんな天候で、ヘコムそうだ。こんなときは太陽のありがたみが実感できると。よく公園で日光浴をしている人たちの写真を見るけれど、たしかにこんな天候が続けば、そういうことをしたくなる気持ちはよくわかる。

今日は、おおいに寝坊して、午前中ダラダラ過ごし、昼頃からバスでシャンゼリゼの近くにある三越のアートスペースに歌舞伎衣裳展を見に行った。ここはデパートの三越とはまったく別の場所にある。ネットで番地を調べ、氷雨がそぼ降る中、その通りをさがした。パリは通り片側が奇数番地、反対側が偶数番地になっているのだが、三越があるはずの8番地がちっとも見つからない。しかしふとした瞬間に建物発見。な~んだ、8番地ではなく3番地でした。通りを渡ってそこへ行こうとしていたとき、1人のおばあさんが話しかけてきた。2時からでないとやっていないと教えてくれたのだ。おばあさんは私に話しかけてきたのだが、とっさのことで聞き返すと、すかさずDo you speak English? と言ってきた。このときには娘とタッチしていたので娘がnonと答えると(娘は英語ができない)、もう一度フランス語で教えてくれた。失礼ながら、どちらかというと貧しそうな身なりのおばあさんだったが、英語を喋れることに、そして何より親切に教えてくれたことに感激。フランス人というのは冷たいところもあるが、困っている人には必ず手を貸してくれる。階段を上がれないでいる乳母車を引いた女性、転びかけたお年寄り、さっと手が差しのべられる。小さい頃から身についているのだろう。感心する。先日の三流銀行員とは大違いだ。日本にあるフランス大使館の日本人職員が、これまた超冷淡で、大使館に用事がある日本人は大半がイヤな思いをしている。

話がそれた。2時までの20分ほどの時間をシャンゼリゼでつぶし、会場へ。

入り口からなんとなく入った部屋では、シャイヨー宮で海老ちゃんが演じた「春興鏡獅子」のビデオが流れていた。小さな部屋で、10人程度のフランス人がけっこう熱心に見入っていた。弥生が小さな獅子頭を手にすると、何がおかしいのかあちこちから小さな笑い声が聞こえてきた。でも、弥生が引っ込んだときは、ビデオを見ている人からも拍手が涌いて、ちょっとびっくりした。嬉しいことにビデオはカーテンコールまですべて流してくれていた。4回もカーテンコールがあり、後ろのほうの若い観客は熱烈なるスタンディングオベーションで海老ちゃんを称えていた。4回目には、海老ちゃんが自分で定式幕を引くというお茶目なオマケまでついた。このときは団十郎さんが病気で参加しておられず、パリ市民もそれを残念に思うというようなコメントをしていた。それだけに、今回の公演は、団十郎さん、海老蔵さんだけでなく、パリ市民も待ちに待っていたに違いない。私は団十郎さんがとってもよかったと思ったが、やはりこの公演にかけるものが現れていたのだろう。お元気になられて、私まで本当に嬉しく思っている。

さて、衣裳のトップバッターは、「大森彦七」の直垂。え~、大森彦七なんて知らないなと思いながら説明を読んでいたら、三越の方が説明してくださった。新歌舞伎18番の人物で、楠正成の家来を斬ったことで、その娘に恨まれる。だが実はその家来は自害したのであった。彦七は狂ったふりをして難を逃れる(だったかな。その辺はよく覚えていない)。9世団十郎がこれを活歴物として史実に忠実に演じたが、芝居としてはあまり面白くなく、江戸時代の民衆には不人気だったらしい。この衣裳は団十郎時代のものかどうかまだはっきりとは分かっていないが、9世団十郎が考案した(鎌倉時代の衣裳を再現した)物であることは間違いがないのだそうだ。そういう意味で、三越衣裳部の象徴的存在として、最初に展示したのだそうだ(チラシを見ると松竹衣裳部となっているが、三越衣裳部と言っていたように思う)。

1階には白拍子花子のしだれ桜模様の緋色綸子のさしこみ襦袢、振袖、やはり花子の浅葱色の綸子の振袖、鯉の滝のぼりをモチーフとした男性衣裳。亀ちゃんの袖萩の写真もあった!!でも展示品はこれで終わり~?思っていたら、2階、3階とたくさんの衣裳があった。だいたい昭和初期のもので、揚巻、船弁慶の静、岩藤、紅葉狩の更科の衣裳など。フランス人見学者たちが7~8人、ガイドの説明を熱心に聞いていた。3階には白浪五人男の5枚の縮緬の衣裳がずら~っと並べられ圧巻。

壁に貼られた説明はフランス語のみで、日本語の着物用語と対比させて書いてあるので、案外面倒くさく、読むのは適当に切り上げた。

外へ出たら、雨はまだ降り続いている……。夜は亀ちゃんとの食事会。一度帰宅して気合を入れ直さねば。

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2007年2月 9日 (金)

江戸城に天守閣がほしい!!

27日 江戸城展(江戸博物館)

この日は、朝10時から5月の「薮原検校」(コクーン)の彩の国芸術劇場会員先行販売だった。電話販売なので10時には電話の前にいなくてはいけないのだが、たまたま歌舞伎フォーラムと重なってしまった。携帯の電波が間違いなく入り、しかも電話が通じるまでどのくらいかかるかわからないから、結局10時に両国に着くことにした。

地下鉄を降りて即チケットセンターに電話を入れるが、全然通じない。しばらく地下鉄ホームでねばったが、いつまでもホームにいるわけにいかないから、江戸博物館に向かった。その間も電話かけっぱなし。そして江戸博物館のベンチでさらにねばったら、やっと通じました。希望の日、座席は後ろのほうだけど、取れただけよしとしよう。コクーンの蜷川は普通に取ろうと思ってもまず無理なんだから。今回も先行販売がなければ、最初から諦めるところだった。

このとき時刻は1020分過ぎ。江戸城展を大急ぎで見ようかと思ったが、わ~人気あるんだなあ、チケット売り場に3重くらいに行列ができている。これじゃ、チケット買うだけでも時間がかかってしまう。ということで、残りの時間はミュージアムショップなどを冷やかして過ごし、江戸城展は、歌舞伎フォーラムが終わってから見た。

P1050393 チケットはすぐに買えたが、中はけっこう混んでいる。私が興味をもったのは、何と言っても図面。天守閣絵図や、城内の見取り図(と言うのかな)、本丸の役人の詰所割、席図、などなど、めちゃくちゃ詳細な図が何枚も展示されている。中でも圧巻は、大棟梁・甲良若狭が作成した「江戸城本丸表・中奥惣地絵図。とにかくデカい。細かい。二階部分が克明に描かれている。「凄い!」とただただ圧倒された。このような図面を見ると、松の廊下の刃傷が、ドえらい出来事だったということがよくわかる。

次に面白いと思ったのは、江戸城内における規則や心得、行事などを細かく記した文書類。中には、心得を携帯用にまとめて持ち歩いていた大名もいたようで、そういうものが展示されていた。これだけ細かく色々なことを規定しないと、あれだけの幕府を維持することはできなかったのだろうが、あれだけのものすべてをきちんと把握している人など誰一人としていなかったのではないかしら。

現在、江戸城には天守台があるのみで、天守閣はない。3度建てられ、明暦の大火で焼失した(明暦の大火は有名だけど、天守閣まで焼いちゃう火事って、想像もつかない)のを最後に、再建計画はあったものの実現しなかった。江戸城に天守閣があったのは、265年の歴史の中のわずか51年間だったそうだ。だから天守閣のない江戸城のほうがお馴染みなわけだが、それでも50分の1の模型、あるいはCGで再現された天守閣を見ると、江戸城に天守閣がないのがとても残念に思える。感覚的なものなのだけど、江戸城に天守閣は必要だ、と強く思うのである。

これまでさまざまな展覧会を見てきたが、ある国の力だとか権威を示すものは、たいてい<物>であった。金、宝石類、見事な装飾品などが、権力の象徴であった。でも、この江戸城展で私が江戸幕府の権力を実感したのは、ここに挙げた図面類と細かく規定された役職やら規則やらなのだった。

出口を出ると、通路に江戸城の色々な門の明治初期と現在の写真が並べて展示されている。半蔵門など、牛の曳く荷車が写っており、妙な感慨を覚える。

「江戸城展」は一度で見るには盛り沢山すぎて、かなり疲れる。もう一度行って、じっくり見直してみたい。このあと常設展示室でやっている「江戸博の雛祭り」と「徳川家茂とその時代展」を見るつもりだったが、とても余力はなく、諦めて帰った。それも含めて、江戸博には近いうちもう一度行こうと思っている。

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外へ出たらまだ明るかった(日がのびたなあ)ので、例の亀に乗った人物の像が誰なのかを見てきた。暗い中で見たときは太田道灌かと思ったが、徳川家康が正解だった。

それから今回初めて、こんなものがあるのに気付いた(下の写真)。やっぱり江戸博は楽しい場所だわ。

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