配信版「新版オグリ」
三月の公演はコロナのためにすべて中止になってしまったが、無観客で収録した動画が松竹チャンネルで4月に期間限定、無料で配信された。とてもありがたかったのに、ちょうど忙しくなってしまい、一番見たかった歌舞伎座がほとんど見られなかった。すっかりくじけて歌舞伎への意欲も失われ、感想アップもできなかったけれど、やっぱり自分の記憶のために残しておこうと思う。もう半年近くも経って間抜け感大なうえに中途半端ではあるが。
「新版オグリ」(フルバージョン)(南座)
演舞場で見たのは隼人さんのオグリだったので、今度は猿之助オグリを楽しみにしていたが、配信期間が4月13日16:00~19日23:59:59と短いうえ、あまり時間がなくて細切れで数回に分けて見た。
残念なことに画質も音質もよくない。
オグリと照手は、カップルとしては猿之助さんより隼人さんのほうが似合っていると最初は思ったが、第三幕では猿之助さんともお似合いだった。猿之助さんは先代に似ている--先代の芝居はほとんど見ていないけれどそんな気がした。餓鬼病みになったオグリと照手の再会(照手はオグリと気づいていない)におけるオグリの「会いたかった、会いたかった、会いたかったぞぉ」の叫びには泣けた。「夫に会ったことをさぞ後悔しているでしょうね」と言うオグリ、照手の気持ち、それを聞いて涙ぐむオグリ、ここも泣けた。このコロナの時期、餓鬼病みのオグリの悟りは心に響いた。薬師如来に抱かれるオグリは安堵して子供のようだった。この場面は隼人さんでも大いに感動したものだが、今比べてみると、隼人さんのほうが現代的な感じだったか。
照手の新悟さんはやはり透明感というか清新さがいい。気持ちの美しさを真っ直ぐに表現して嫌味なく、素直にこちらの胸に届く。アップで見るその表情のやさしさ、餓鬼病みのオグリを抱く姿は母の姿であった。
隼人さんの遊行上人は若いのでどうかなと懸念したが、堂々としてなかなかよかった。
宙乗りは、演舞場ではオグリと遊行上人が上手・下手で同時に馬に乗っていたが、南座ではオグリが鬼頭長官と2人で一頭の馬に乗っての宙乗りだった。
猿三郎さんと弘太郎さんの客席いじりでは、誰もいないことに「せっかくええお芝居しているのにもったいないなぁ」という猿三郎さんのセリフに思わず頷いた。スーパーリフトバンドの用意を促す鬼頭長官のテンションも、客がいたら盛り上がっただろうに。カーテンコールははじめちょっとむなしい気がしたものの、出演者全員の心が伝わってくるようで、みんなに拍手を送った。
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