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2008年8月 1日 (金)

7月最後は巡業ハシゴ:竹三郎さんバンザイ

731日 巡業中央コース千穐楽昼の部(板橋区立文化会館)

同日   巡業東コース千穐楽夜の部(練馬文化センター)
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左:板橋         右:練馬
怒涛の
6月なんて思っていたら、7月のほうがもっと怒涛だった。その怒涛を象徴するような巡業千穐楽のハシゴ
中央コース(錦之助さん)は当初の予定には入っていなかったのだが、初日に拍手し足りなくて、モヤモヤしていたから、何とかもう一度行こうと思っていた。千穐楽なら池袋を中心に、昼の部は東武東上線、夜の部は西武池袋線と、なかなか便利。間に1時間以上余裕があったので、本日最初の食事をビールとパスタで摂ることもできたし(夏は1人でもだぁ)。
中央コースは、やはり地味感は拭えないけれど、大向こうは盛んにかかっていたし(よっぽど私も声かけちゃおうかと思った。どこかで女の人の声がかかっていたら、やってしまったかも)、今日はバッチリ拍手もできたので満足。
さて、ここから確信犯的超こじつけ比較。「橋弁慶」「操り三番叟」。後者はもちろん、後見が三番叟を操るのであるが、時としてどちらが操られているのかと訝しむような場面もあり、それが面白い。前者は、弁慶が牛若丸を侮って操ろうとし、逆に操られ降参する。と考えれば、なんか似ているじゃない。
踊りは両方ともとても楽しかった。初日もそうだったが、弁慶は舞台が狭いため、やはり動きが制限されてしまうのだろう。とくに花道ではない花道での動きは工夫して大きく見せているものの、やはりきびしそうだ。後ろの壁に弁慶の影が大きく写って、案外それがいい効果を出していたように思う。
三番叟は、細かい足踏みと音が揃っていないような気がしたが、どうだろうか。今日は3回目にして初めて前のほうの席に座れたが、こと三番叟に関しては、後ろで全体が眺めたときのほうがよかったかもしれない。というのは、前で見ていると、亀鶴さんと亀治郎さんの距離が妙に遠く感じてしまうのだ。1つの視野に入ってこないからなんだろうと思う。そのため11人はいいのに、2人の連携にイマイチ物足りなさを感じた。
「毛谷村」「弁天娘女男白浪」。前者は男装の麗人、後者は女装のイケメン。いずれもバレて…あ、似ているのはそこだけか。この企み、あえなく失敗。いや、もう一つ思い出した。手拭の存在である。前者はお園が六助の胸元からひょいと手拭を抜き出し、姉さんかぶりする。後者は、鳶頭が投げた手拭を弁天が頬かむりする。それだけのことでした。
錦之助さんの六助は変わらず真面目なんだけど、初日に比べてずいぶんこなれている感じを受けた。わたし、この六助、とても好きです。今日の時様、錦之助さんにお顔がとても似ていた。東蔵さんは初日はあまりピンと来なかったが、今日はよかった。子役ちゃんがかわゆい。
弁天では、亀鶴さんに大きさを感じた。澤五郎さんの番頭が、後で悪事がばれることを知っている目には、いかにもといった印象だ。竹三郎さん、実はこの前の口上でとても感動的な場面があったので、それがオーバーラップしたのか、呉服商なら当然お金にシビアなところがあってしかるべきなのに、弁天たちに対する表情が慈悲深いような哀しいようなものに見えて、印象に残った。
「口上」。中央コースは初日とほとんど変わらない内容で、オーソドックスなものであった。そこで東コースだけご紹介する。まず口を開いたのは亀ちゃん。暑さとの闘いだったが1人も欠けることなく千穐楽を迎えられた。巡業が終わると、巳之助クンはすぐ舞台。8月は「1部も2部も3部もすべて出ますから、1部も2部も3部も見てください」と強調して笑いを誘った。亀ちゃん自身は9月は演舞場と歌舞伎座、10月はNHKのドラマで、白塗りでなく素顔で出ます、と。そして昭和7年生まれ75歳の竹三郎さんのことになった。自分はこのまま帰ってしまおうかと思うこともあったりしたが、70過ぎての巡業はとても大変なのに竹三郎さんは弱音を吐かず頑張ってこられた。自分が子供の時明治座で共演し、まだ幼くて顔のことができない自分の顔をやってくれたのが竹三郎さんだった。関西歌舞伎の竹三郎さんには喜寿でぜひ「河庄」の紙屋治兵衛をやってほしい、そうしたら自分が小春をやる(それ、絶対見に行きます)。それから、「これは無理だと思いますが、私より先に死なないでほしい」と。
すると竹三郎さんがしきりに顔を拭き出した。私は亀ちゃんにいじられてテレて汗をかいているのかと思ったら、なんと、竹三郎さんは涙を拭いておられるのであった。口を開いたとたん、「今の亀治郎さんの言葉で…泣くまいと思っていたのに泣いてしまいました」と声をつまらせた。ああ、竹三郎さんって、なんて純粋な方なんだろう、それに比べて私のスレていること。私は自分を愧じるとともに、竹三郎さんの心と亀治郎さんの心の温かさにぐっときて、うるうるしてしまった。竹三郎さんは、自分たちも大変だったが、トラックの運転手さんや裏方さんはどんなに大変だったことかと思いやり、そのやさしさが又ぐっとくる。元々好きだった竹三郎さんがますます好きになった。浜松屋幸兵衛は初役だが、役者は生涯修行とおっしゃる。そして「巡業はこれで最後にしたい」と又泣かれた。
亀鶴さんはご自分の役を紹介する程度の簡単なご挨拶。桂三さんは「やっとお江戸に戻ってきた。巡業は楽しかった。竹三郎さんもご一緒に永遠に続くといい」と笑わせる。巳之助クンは「あしたからは8月の稽古にはいる。竹三郎さんを見ていると、弱音は吐けない。今日はいつも通りに、いやいつも以上に頑張ります」。段四郎さんは「75歳の年齢で38歳の気力をもつ竹三郎さん、18歳の巳之助クンのパワーに支えられ、62歳の自分も頑張れた」など、ちょっとカミながら話したところが好もしかった。竹三郎さん、本当にみんなに気力を奮い起こさせるもとになっていたんだなあ。
亀ちゃんによると、北は北海道から南は丸亀まで、27日間で48公演だった、11000人が見るとすれば48,000人の人が見てくれたことになるということで、そういう数字を出されると、巡業って大したものだなあと思う。
中央コースは梅玉さんの「神田祭」が、キレよく華やかに最後をしめた。
両コースとも、皆様暑い中、本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。
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←ひどく大雑把なタイムテーブル、ウケた

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歌舞伎観劇記」カテゴリの記事

コメント

巡業のハシゴ、お疲れさまでした~っ! 絶妙な巡業の日程とはいえ、SwingingFujisan様の行動力にも感服&感謝(レポを拝見できますので)です。
亀丈巡業の口上レポを拝見し、私もPC画面の前で目頭が熱くなってしまいました。座頭としてのいたわり、優しさ、そして尊敬を集める芸が、もう既に亀丈には備わっているのですね。そして、竹三郎丈のひたむきさ、芸熱心さにも、皆さんが励まされているのでしょう。それは舞台を拝見しているだけで、観客の私どもも分かりますよね。
昨日は色んなところで千穐楽、だったんですね。8月も忙しくなりそう(苦笑)。こちらも、頑張りましょうねっ!

投稿: はなみずき | 2008年8月 1日 (金) 07時04分

はなみずき様
コメントありがとうございます。
昨日は歌舞伎座も千穐楽でしたね。最初に予定を組んだのが東コースでしたので、夜は動かすことができず、でもラス前とはいえ、錦之助さんの千穐楽も拝見できて、胸のつかえがおりたような気持ちです。

中心に立つ方の配慮は周囲に伝わり、それが舞台にも現れてくるのでしょうね。とくに巡業はチームワークが大切ですものね。

6月<7月≒8月になりそうです 頑張りますっ!
はなみずき様もね

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月 1日 (金) 08時42分

お疲れ様でした。巡業千穐楽のハシゴされたのですか。私は東コース昼の部観劇しました。口上で亀治郎さんが「私の参加する巡業はいつもハードです。」と仰っていました。竹三郎さんは、順番がきたのに暫く顔をあげずにいらして、「感無量になって‥」と話し出されました。この一座の皆さんのチームワークのよさ、優しさを感じられる口上でした。
巳之助君も、一座にとけ込んだようでした。8月は歌舞伎座三部全部に出演なので頑張って欲しいです。
SwingingFujisan様や、はなみずき様同様、私も8月は忙しくなりそうです。

投稿: とこ | 2008年8月 1日 (金) 09時35分

とこ様
コメントありがとうございます。
竹三郎さんは、万感迫る思いだったのでしょうね。「泣くまいと思っていたのに」という言葉の裏には、昼の部の口上での件があったのですね。お元気で千穐楽を迎えられて本当によかった(感動の涙です)
巳之助クンにとって、この巡業は大きな糧になりましたね。8月の公演にどのようにそれが生かされているか、楽しみです。お互い、体調に留意して、忙しい観劇ライフを楽しみましょう

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月 1日 (金) 09時51分

私も昨日は、「歌舞伎座」⇒「練馬文化センター」⇒「日本橋劇場」と巡業してきました。まだアップしていませんが、近いうちに。三番叟は、初日の私の感動がすごかったので、正直、昨日は、そこまでアドレナリンが出ませんでした。でも良かったです。口上は、私が拝見した昼の部でも、竹三郎さんへの労わりの声に胸が熱くなりました。SwingingFujisan様の仰るとおり、純粋な方ですね。薪車さんもキラキラしているし、素敵な親子だな~と思います。ちなみに私は、こんな感じです。6月<7月<8月。

投稿: aki | 2008年8月 1日 (金) 13時58分

aki様
す、すごいです。私もかなり頑張ったつもりでおりましたが、歌舞伎座⇒練馬⇒日本橋とは 編集中のご感想、楽しみにしております。 
薪車さんが竹三郎さんのお人柄に惚れたという気持ちがわかるような気がしました。
8月はみなさん、お忙しそうですね。歌舞伎ファンのテンションは暑さに正比例?な~んてね 

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月 1日 (金) 15時30分

 竹三郎、萬歳
 巡業は舞台が満足でないので好きではなかったのですが、旅ならではの演目である口上も見たいし、今年の東コースは亀三郎に竹三郎という贔屓の「三郎」ペアの御出座ということもあって、初日に出掛けました。充実した舞台に大満足でした。あれから1ヶ月、盛夏の旅に気力体力を心配していましたが無事に、しかも客席を感動に包み込む楽日を迎えられたようで安堵しました。
 現在の竹三郎が巡業を決心したということ自体が驚異、今でも信じられない思いですが、彼を動かしたのは亀三郎の熱い気持ちだったのですね。いつか河庄の治兵衛を、自分は小春を演るから、先に死なないで。ブログを拝見している最中から泣いてしまいました。きっと役者冥利に尽きる思いでしょう。河庄は是非とも実現して頂きたい。
 なかなか見られない場面を教えて頂いたことに感謝します。これからも、いろいろなシーンを伝えてください。ありがとうございました。

投稿: 淳之 | 2008年8月 6日 (水) 23時35分

淳之様
コメントありがとうございます。この
巡業は初日から完成度の高い舞台だったと思います。
竹三郎さんの巡業の決心は本当に驚きでした。あのハードスケジュールですからね。おっしゃるとおり、若い役者さん(亀は亀でも三郎ではなく治郎です…でも、亀三郎さんも大好きです)の熱意が竹三郎さんを動かしたのですね。
河庄はぜひぜひ実現してほしいですね。竹三郎さんもきっと、この亀治郎さんの言葉に感極まったのでしょう。こういうシーンが見られるのも巡業ならでは。ますます歌舞伎が好きになりました。

投稿: SwingingFujisan | 2008年8月 7日 (木) 00時25分

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