« どうなる、鉄塔2 | トップページ | 明日じゃ遅い »

2008年4月 6日 (日)

テレビは忘れて:風林火山

45日 「風林火山」(日生劇場昼の部)

080405harunbu 待ちに待った初日!! 
客席は花道のあたりがやや明るいが、全体に薄暗い。開演15分くらい前に入ると、花道で兵士が手甲を付けたり、身づくろいを整えている。通路にも何人かの兵士がいて、歩き回りながら「お主ら、死ぬなよ」「お主たちもな」などと言い合っている。開演前にもう芝居は始まっているのである。これはニナガワの手法に倣ったのかしら。
やがて、上妻宏光さんの三味線による「風林火山」のテーマ曲がゆったりと流れてくる。去年1年間の大河を思い出し、ちょっと胸が熱くなった。
先に総括すると、どうしてもテレビと比較、あるいはテレビの記憶が強いため物足りない部分は多々あるけれど、面白い。面白いから、ぜひ多くの方に見ていただけるといいなあと思う。

舞台に4人の男、弟・信繁(嘉島典俊)、弟・信廉(松尾敏伸)、馬場信春(高橋和也)、祐筆・駒井政武(橋本じゅん)が立つ。下手から1人ずつライトが当たり、それぞれ晴信の人となりを語る。そして「疾きこと風の如し」から1人ずつつなげていく最後、「動かざること山の如し」で駒井が口を開こうとすると、晴信の声がかわりにそれを言い、奥からクレーンに乗った戦装束の亀ちゃん登場。万雷の拍手の中、舞台には男性出演者の全員(と思われる)が並び、さながらカーテンコールで幕が開いたかのようである。
まさに、つかみはOK
さて、しかし大河の「風林火山」を思っていると全然テイストが違うことに驚かされる。まず物語の中心になるのが勘助ではないのは当たり前として(副題が「晴信燃ゆ」だものね)、主として晴信の心の動きを追ったものだろうか。板垣(JJサニー千葉)と晴信の関係を前面に押し出したいというような意図があったのだろうが、その焦点はややぼやけていたような気がした。というか、父・信虎(笠原章)の人物像にあまり深みがなく、ただのワンマンでヒステリーなオヤジとしか映らなかったために、逆に板垣と晴信の絆が薄れてしまったように思うのだ。しかし、二重盆の使い方が非常にうまい。対峙する2人の心境、時の流れ、そういうものが、盆の動きだけで見事に表現されていて、これには大いに感銘を受けた。それに、舞台が廻ってくれるおかげで、「陰になって見えな~い」という小さな不満も解消される
人物造型は信虎もそうだが、多分テレビを意識してはいけない。たとえば駒井。完全な三枚目キャラで、さかんに笑いを取る。橋本じゅんさん(「未来講師めぐる」のおじさんだぁぁ)の剽軽な演技は実にうまい。最初の4人の語りの時、すでにそれを発揮して、「え、駒井ってこんなキャラ?」と心に笑いの漣を立ててくれる。2幕目のはじめ(由布姫に子供が生まれたとき)、まだ席に戻ってこない人が多いのを見て、さかんに盛り上げる。この橋本さんのノリは新感線のノリだということだ(私は新感線をちゃんと見たことないので伝聞ということで)。また、三条夫人のおつきの中将(市川段之)も客席の笑いを掻っ攫うというくらい、おかしかった。段之さん、水を得た魚のように伸び伸びと演じていた。
そういうこともあり、大河とは別の芝居として見ればいいのだろうが、出演者の一部は同じ、音楽も同じとくれば、どうしたってそれはムリだ。そうなると、女性陣に違和感を覚える。まず大井夫人(仁科亜季子)に情があまり感じられなかった。描かれ方が浅くて、そういう情の出しようがなかったのかもしれない。
三条夫人(尾上紫)は、気位が高いのはいいとして、公家のおっとりした印象がなく、ただ身分の高さを鼻にかけたきついイヤな女に見えた。華やかな京の都から甲斐という山国に来た心細さのようなものが窺えてもいいのではないかしら。ちょっと可哀想な描かれ方だなあという気がした。いっぽうの由布姫(守田菜生)は逆におっとりとして、美人ではないけれど可愛らしさがあり、晴信を殺そうとして殺せない、今日は憎いかと思えば明日は愛おしく思う、という心情吐露の場面が胸を打った。ただ、守田菜生さんは由布姫のイメージではないなぁ。女性陣の中で一番しっくりきたのは於琴姫(大和田美帆)かもしれない。明るい大らかさがよい。
JJ
サニーは存在感もあり、大きさも温かさもあるのだが、声の透りがよくない。マイクをつけているようだったのに、それでも聞き取りにくいのが残念。
さほど目立たないのだがいいなあと思ったのが嘉島典俊さん。やっぱり舞台の人なんだ。しっかり芝居に溶け込んで、立ち居振る舞いもきれいだ。
亀ちゃんは、晴信は1年間なりきっていた役だから、それはもう手に入っている。しかしテレビとちがって、年齢を重ねたことによる重厚さはあまり出さず、声も若いときに比べてやや低くする程度で、若々しさが持続していた。表情も、笑ったときなど、思わず「かわゆ~い」とにたにたしてしまう。晴信の人物造型は、父との葛藤、苦悩、女性関係など、人間的な部分を中心としているが、やはりもう少し深く描き込んでほしい気がした。その不足感を亀ちゃんの演技が埋めてくれていて、泣いている人もかなり多かった。勘助のほうは、内野さんへのオマージュなのか、声や喋り方を内野さんに似せていた。でも、亀ちゃんの勘助にはちょっとついていけないかも(これも、内野さんの勘助を頭に置いて言っている。次回はついていけるかも)。早替りは、早いョ。全然わからなかったのが1回あった。

今日は初日だし、まだこなれていない部分もあっただろう。でも、とても面白かったし、1回見たら2度見たくなる(私、都合3回見る予定)。各幕105分という長さながら、ほとんど退屈しない(正直、2幕目、ちょっとだけ睡魔に負けました)。舞台も日々進化するだろうし、こちらもそのテイストに慣れるであろう分、2度目はまた違う印象をもちそうな気がする。しかも次回は2階席。白馬に乗った晴信さまが間近に飛んでくる。気持ちよさそうに、そして客席に亀ちゃんオーラを振りまいて飛ぶ姿が目の前で見られるのだ。今日はなぜかオバ拍手し損ねたけれど、次回は絶対すると思うし、手も振っちゃおう。
<上演時間>第1105分、休憩20分、第2105
おまけ1前夜、チケットを取り出してバッグに入れるまで、13時開演だと思っていた。なぜか手帳にそう書いてあったのだ。前の日にチケットを確認してよかった。
おまけ2私の後ろの列に2組、よく喋る客がいて、ひどく気になった。それも、喋りながら笑ったりして、家でテレビ見てるんじゃないんだから~。とくにそのうちの1組は上演時間の半分は喋っていたと思うよ。通路を挟んでいたので我慢したが、劇場の人に言うべきだったかな。

|

« どうなる、鉄塔2 | トップページ | 明日じゃ遅い »

演劇一般」カテゴリの記事

コメント

「風林火山」の初日とともに、SwingingFujisan様のレポ、「待ってましたぁ~!」。詳細レポ、ありがとうございました。各幕の時間も教えて頂きまして、大変参考になります。
「心を新たにして」舞台を拝見すれば良いのですねっ。了解いたしました。
今回の座組では初めて拝見する役者さんも多いので、「初心者マーク」つけて観劇するつもりです。歌舞伎からは段之丈がご活躍なのですね!
亀治郎丈が拘った音楽の使い方、早替り、そして宙乗りが楽しみです!

投稿: はなみずき | 2008年4月 6日 (日) 20時00分

はなみずき様
ありがとうございます。
早くテレビの記憶から離れた方、あるいはテレビと舞台は別物と割り切った方は十分楽しめたと思います。今回は私の見方がちょっとまずかったなあと反省しております。段之さんのご活躍も含めて、見所いっぱいですから、ぜひ楽しんでご覧くださいませ。

投稿: SwingingFujisan | 2008年4月 6日 (日) 20時25分

こんにちは。
とてもとても、詳しい御説明で、感激! しました!
私は、行きたいのですが、今のところ諸事情の為、あきらめてるのですが・・・これだけ、お話し 下さることに 涙涙・・・です。 ありがとうございました。 亀治郎さんに どんな方から、お花が届いてるのかな とか、ロビーに どなたが、おられるのかなとか、本当は東京まで行って、劇場まで、足を運ばないと、雰囲気を感じることは 出来ないのですけど、このように、細かく、お話を伺う事が出来て、とっても幸せ気分に、浸る事が、できました! あと、 二回行かれるとの事、お気をつけて。 そして、又お話を、伺える事を、今から心待ちにしております♪。

投稿: 季子 | 2008年4月 8日 (火) 16時29分

季子様
ご丁寧なコメントをありがとうございます。大変嬉しく存じます。
季子様のように直接劇場に足を運ぶことが出来ない方もいらっしゃるのに、3回も見るなんてちょっと申し訳ない気持ちですが、あと2回、季子様の分までしっかり見てまいりますね。
芝居が終わると興奮のあまり記憶が薄れてしまったり、後になって書き忘れた、と残念に思う部分もいくつかあり、それは次回にご報告したいと思っております。
なお、ご存知かとは存じますが、亀治郎さんのHP、スタッフブログに写真が何枚か載っています。舞台の様子も少しは窺えると思いますのでご覧になってみてくださいませ。
http://www.kamejiro.info/staff/

投稿: SwingingFujisan | 2008年4月 8日 (火) 16時57分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« どうなる、鉄塔2 | トップページ | 明日じゃ遅い »