絶対オススメ:映画「ペルセポリス」
1月30日 映画「ペルセポリス」
絶対オススメである。以前、この原作4巻を娘とじっくり読む機会があり、その後映画化されたこの作品をパリで見た娘から「絶対見なくちゃダメ」と言われていたこともあって、日本公開を心待ちにしていながら、すでに1カ月以上もたって、やっと今日めでたく見ることができた。
ちなみに原作はモノクロのグラフィック・ノベル、映画はそれをアニメ化したものである。
内容は、パリ在住、1969年生まれのイラン人女性マルジャン・サトラピ(マルジ)の10歳からの自叙伝(映画は9歳から)。イランの歴史などほとんど知らない私にとって、苛酷な歴史に翻弄されてきたイラン人一家の物語は新鮮かつどきどきするような興味をひくものであった。パーレヴィ時代も革命時代も、イスラム共和制になってからも人々は希望を踏みにじられ、そのたび大勢が殺され、やがて勃発したイランイラク戦争でもまた多くの人々が命を落とし……そういうイランという国に住む1人の少女の日常が実に生き生きと描かれている。マルジと一緒に怒り、泣き、落ち込み、苦しみ、笑い、幸せな気分を味わい、マルジを愛おしく思う。
マルジの周囲でも逮捕や処刑が日常化している暗い時代背景なのに、この物語が暗くじめじめしていないのは、時にブラックでもあるユーモアがこの作品にちりばめられているからだろう。それは、自由でインテリジェンスに満ちた前向きな態度、理不尽な権力に負けない抜け道を見出す智恵と英知をもった両親と母方の祖母の愛情に支えられたマルジの性格がなせる業ではないだろうか。とくにおばあちゃんの生き方がマルジに与えた影響は大きい(このおばあちゃんを見て、私はオシムを思い出した。あんなに皮肉屋ではないけれど、歴史の波にもまれた人の共通点があるような気がする)。おばあちゃんは毎朝ジャスミンの花を摘んでブラジャーの間にしのばせておくという。なんてステキな女性!!
自由がどんなに貴重なものであるか。自由を当たり前のように享受している私たちからすれば笑ってしまうような理不尽な不自由さが当たり前の社会、それは日本でもかつてあったものであり、今も世界の多くの地域でみられるものであろう。そんな国や社会でも故郷は故郷、人は故郷を捨てても、故郷を愛し続けるものなのだ。この映画は、まったく押し付けがましいところなく、説教臭くもなく、自然にそれに頷かせてくれる。
マルジ自身による絵は独特の不思議な雰囲気を醸し出しているが、映画はそのままモノクロでアニメ化したことにより、まさに原作が動いているかのような印象を与え、この不思議な雰囲気をまったく壊していない(マルジの現在だけ、つまり映画の出だしと最後だけ、カラーが用いられている)。4巻にわたる原作はグラフィック・ノベルであるからして吹き出しの中のセリフも、いわゆる地の文も文字が多く、これを95分の映画にまとめるのは至難の業だったと思う。しかしマルジ自身が脚本・監督を担当(ヴァンサン・パロノーと共同脚本、共同監督)することで、それは大成功を収めた。
さらにこの映画が魅力的なのは、なんとマルジ母娘の声をドヌーヴ様とキアラ・マストロヤンニ母娘が、そしておばあちゃんをダニエル・ダリューがやっていることだ(ドヌーヴ様とダリューはいくつかの映画で親子として共演している)。私が見た映画館(渋谷シネマライズ)では先週英語版をやっており、フランス語版の見たかった私は英語版が終わるのを待っていたのだが、英語版でもマルジ母娘はドヌーヴ様とキアラが、そしてマルジのおとうさんをショーン・ペンがやっていたのだそうだ。そう知ると、英語版も見ておけばよかったかな、なんてちょっと残念な気がしないでもない。
絶対オススメなんだけど、渋谷シネマライズでは2月2日からはモーニングショーのみになる。
映画の詳細はココで。
<上映時間>1回目:予告10:40、本編10:55~12:30、というように、予告編15分、本編95分。2月1日までは12:50、15:00、17:10、19:20の回がある。2日からは10時40分の回のみ。予告がやたら多い。
<シネマライズについて> 1階の窓口で座席指定券をもらわなくてはならない。前売り券を持っていても同じ。私はそれを知らずに、入り口に並んでいたら、入場のときにそう言われて、慌てて窓口に走った。
スクリーンは二階に合わせて作ってあるとのことで、1階は少し見上げるようになるらしい。そういうことなので、1階は段差なしだが後方の席が見やすい。個人的好みは2階だという窓口のお兄さんの言に乗って私は2階席を選んだ。まだ誰もいなかったらしく、どこでもオーケーだったので一番前のど真ん中を取った。手すりがスクリーンの一番下からちょっと下に当たるような感じ。とても見やすかった。
おまけ:センター街からパルコ3へ上がる細い坂道の途中で、こんなお店発見。
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