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2007年10月16日 (火)

4人目の俊寛

1016日 「平家女護島」「昔語黄鳥墳」(国立劇場11時半の部)

0710116ntj 今年4人目の俊寛だ。すなわち、1月の吉右衛門さん、7月の右近さん、そしてつい先日の勘三郎さんに続いて今日は幸四郎さん。で、この間の勘三郎さんの時にも書いたけれど、吉右衛門さんで自己完結してしまった俊寛は、私の中でどう折り合いをつけるか。

今回の「俊寛、意外によかった。幸四郎さんは私はあまり合わないのだが、この俊寛ならいいと思える。最初に登場したときの足取りがしっかりしていたのが印象的だった(俊寛ってまだそんなに年をとっていないはずなので、リアリティを出したのかな)。また、俊寛がよじ登った岩が波に囲まれたところを俯瞰することによって、俊寛の気持ちがぐ~っとこちらに押し寄せてくる。思わず涙が出そうになった。俊寛は絶対上から見るべし、と思ったことである(奇しくも吉右衛門さんと幸四郎さんの俊寛は上から見たことになる)。

段四郎さんの瀬尾、梅玉さんの丹左衛門、どちらも多分少なくとも2度は見ているが、この役ではこの2人がベストじゃないかしら。丹左衛門には富十郎さんという大きな存在もあるけれど。千鳥の芝雀さんは、情も愛らしさもあるのだけど、どうしても身体の大きさが気になってしまう。

0710162hikosaburo この「俊寛」の前に「清盛館」があるが、今回これがなくて「俊寛」だけだったらパスしたかもしれない。彦三郎さんの清盛は堂々と憎々しくてよかったし、私はこういう芝居は案外好きだなと思いながら見た。清盛が、俊寛の妻・東屋の美しさに口をあんぐりと開けて見惚れる、というところでは、実際に彦三郎さんがそうやったので、私はぷっと吹き出してしまった。周りは誰も笑っておらず、ちょっとバツが悪かったな。歌江さんと鐵之助さんの局が揃って出てらしたときは内心1人盛り上がり(お得な場面だ~)。歌江さん、座り方がうまくいかなかったのか、前をずいぶん気にしていらした。あるいは足がお悪いのかなとも心配したが……。

「清盛館」があることによって、俊寛の悲劇がよりわかりやすくなるということであるが、私は必ずしもそうは思わなかった。つまり、それがなくても俊寛の悲劇はぐっとくる。といって「清盛館」が要らないとも思わない。確かに清盛の権勢がいかばかりだったかはよくわかったし、赦免状を出すあたりの経緯は明確になる。

さて、演目はガラリと変わって「昔語黄鳥墳(むかしがたりうぐいすづか)」。話自体は、まあどうってことのない、肩の凝らない昔話という感じだろうか。染五郎さん、大活躍。いきなり大詰にいっちゃうけれど、悪党・大仁坊と主役の佐々木源之助の早替りはオペラグラスでは捉えきれず、目を白黒させてしまった。

染五郎さんは、長者の婿としての資質を問われ、お茶、鼓、太鼓の腕前を披露するのだが、阿古屋男性版か。阿古屋の演奏も素晴らしかったが、こちらは打楽器ということで、一緒にノレる。長者の梅玉さんは、それらしい大きさとおっとりした感じがあったが、後妻の東蔵さんの悪だくみや浮気に気付かないなんて、ありえないでしょ。芝雀さんはそのお嬢様の守り役の腰元。私は、千鳥みたいな役よりもこういうしっかり者のほうがあっていると思うけどな。

宗之助さんは可憐なお嬢様。襖があいて恋の病姿の宗之助さんが登場すると、客席から笑いが起きたが、何だったの? 宗之助さんが泣いたときも笑いが湧いたけれど、これも何だったのぉ? それから、籠から放たれた鶯がなんともいえないユニークな飛び方をしたときにもずいぶん笑いが起きていたなあ(これは、私もちょっと笑った)。

こういう芝居でのお約束ギャグ。今回は「どんだけ~」と「お尻かじり虫」でした。後者は錦弥さんが歌ってウケていた。

私が一番ウケたのは、悪役の染五郎さんにナタでめった斬りされて殺された宗之助さんが生き返ったとき。そんなのあり~? もっとも、宗之助さんが殺されちゃ、話がどうなっちゃうのかなって思ってはいたのだけど。

「俊寛」のあとに、こういうお話をもってくるのは、あの絶望と諦めの空気を中和させたいのかな。
残念ながらお客の入りはあまりよくなく、役者さんが登場したり引っ込むときの拍手も何となく中途半端な感じがした。

<上演時間>平家女護島110分、幕間30分、うぐいす塚序幕・二幕目45分、幕間10分、大詰65

おまけ1段四郎さんの瀬尾、死んだ後、前は高々と持ち上げられていたけれど、今回はそうでもなかった。私の中では高々との印象が強い。

おまけ2セリフの入っていない役者さんがいて、プロンプターの声が3階まで聞こえたのには驚いた。

おまけ3イヤホンガイドの藤野穣さん、ダジャレっていうのかオヤジギャグっていうのか、盛んに飛ばしていました。今日面白かったのは、「ききなす」(藤野さん、「焼きナスじゃありません」って)。多分、「聞き做す」と書くのだろうが、鳥の鳴き声を人間の言葉のように聞き取ることを言うらしい。有名なのはホオジロの「一筆啓上仕り候」だが、藤野さんから受け売りの例をいくつか。「ツバメ:土食って虫食ってしぶい」「コジュケイ:かあちゃんこわい」「メジロ:長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」「ホオジロ別バージョン:サッポロラーメン塩ラーメン」

梅之さんウォッチング:女方になってから進境著しい。清盛館での六波羅踊り、もうちょっと見ていたかった。うぐいす塚ではセリフもしっかり渡り、色々なお仕事をこなしている。梅之さんのいいところは、楚々とした感じで品がくずれないことだと思う。

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コメント

お早う御座います。「俊寛」はよく上演されますが、「清盛館」がつくのは見たことがありません。彦三郎さんって、こういう役がお上手だと思います。
写真のお茶、彦三郎さんの奥様の実家がお茶問屋さんだとか。そこの商品ではないですか。

投稿: とこ | 2007年10月17日 (水) 09時33分

とこ様
おはようございます。「清盛館」も時々は上演されればいいのに、と思いました。
お茶は急いでいるときにたまたま目に入り、あわてて写真だけ撮ったもので、詳しいことは残念ながらわかりません。ただネットで検索したところ、杉山彦三郎という方がお茶の改良に力を注いだということですので、その銘柄なのかな、と思っておりました。
彦三郎さんの奥様のご実家がお茶問屋さんとは知りませんでした。となると、そこの商品ということも考えられますね。今度見つけたら、必ず買って確かめてみますね(^^)。

投稿: SwingingFujisan | 2007年10月17日 (水) 10時05分

今日行ってきました。が、寝てしまいました(俊寛)
うぐいす塚、一階でも早変わりところどころわからなかったです。かけ声もかかったり、結構お客の反応はよかったです。でも変なタイミングの笑いはありました。^^;

投稿: urasimaru | 2007年10月17日 (水) 20時08分

urasimaru様
私も実は俊寛はちょこちょこ寝ていました (^-^;。
早替り、1階でもわからなかったんですかあ。いっつも心配になるのは、顔のつくりです(うっかり眉を変えるのを忘れたりしてね)。
自分が笑いどころでないと思ったときに笑いが起きると、私だけ何か見逃したのかな、なんて思ってしまいます…。

投稿: SwingingFujisan | 2007年10月17日 (水) 21時07分

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