アツ~い千穐楽:「三人吉三」千穐楽篇
追加公演の設定で、どうなっちゃうのかなと心配した千穐楽。そんなことを忘れさせる楽しい幕後だった。
幕が閉まり拍手の嵐。カーテンコールで勘三郎さんが舞台に現れると、客席総立ちのスタンディングオベーション。2回目のカーテンコール以降、幕はもう降りず、送風機で舞台の雪を散らしたり、役者さんたちが雪を客席に向けて撒いたり、大騒ぎ。
やがて、勘三郎さんを先頭に全員が舞台から降りて平場席を囲む通路を歩き、客に挨拶して廻る。通路近くの客はみんな役者さんに近寄り握手したり、触ったり。私も急いで通路に駆け寄り、勘三郎さんは恐れ多くて触れなかったけれど、福助さん、橋之助さん、勘太郎クン、七之助クン、笹野さん(鑑賞篇でうっかり書き忘れたけれど、笹野さんの伝吉は秀逸)の汗にまみれた腕に触り、そして捕手姿の役者さんに抱かれた白いワンちゃん2匹の身体を撫でました。1匹はまだおチビさんで、2匹ともおとなしく、とにかく可愛い可愛い。客はみんな、犬の可愛らしさに夢中になっていた。
2階席中央に勘三郎さんの名の入った大漁旗みたいな、あまり大きくない垂れ幕が下がっていた。やがて歓声が沸いたので振り返ると、いつの間にか勘三郎さんが2階のそこにいて、多分後援会の方たちなのだろう、挨拶していた。勘三郎さんはその垂れ幕を肩にかけて(オリンピックで優勝者が国旗をかけるみたいに)舞台に戻る。
舞台には串田さんと椎名林檎さんも呼ばれ、林檎音楽大好きの私(といってもアルバム1枚持ってるだけだけど)は心の中で大コーフン。林檎さんは多分ほとんどノーメーク。色白でとってもきれい。派手さはなく控えめで、普通の女の子って感じがするのに、あの独特な音楽はどこから出てくるのだろう。私はこの後、林檎さんをわずか1mくらいの距離で見ることになる(うわぉ!!)。
やがて舞台には幕が降りたが、拍手鳴りやまず、もう一度幕が開き、それを最後に、素晴らしい千穐楽は終わりを告げた。私たち客は満足して引き上げたが、役者さんはこの後、もう1公演やるのだから大変だな。でも勘三郎さんはきっと、追加公演に張り切っていたのだと思う。「1カ月があっという間に過ぎた。もっともっとやっていたい。外国なら3カ月はやりますからね」と挨拶の中で言っていたから。
芝居では幕切れで舞台が見えなくなるほどの雪が落ちてきていたけれど、私の列はギリギリ雪がパラパラと落ちてくる程度であった。それが席を立ってみると、通路にずっと雪が降り積もっている。出演者全員が通路を歩いたときに落ちたものだろう。コクーンの外へ出ても、まだところどころ雪が落ちている。もう外の出口に近い、というあたりまで、ひとひら、ふたひらの雪が落ちていた。私はそれを三人吉三の名残雪に見立て、惜しみながら外へ出た。
★ミーハー的千穐楽:三田寛子さんを何度も見た。淡いピンクの着物がボブスタイルの髪型によく似合い、すらっと綺麗だった。勘三郎夫人もホワイエで後援会の人たちに挨拶していた。観客として西岡徳馬さんが来ていた。イス席一番前の真ん中で見ていて、終演後は楽屋に挨拶に行ったようだった。楽屋(だと思う)入り口の前で、林檎さんと軽く会釈を交わしているところに私が行き合い、おかげでまさにナマ林檎を間近で見ることができたのである。林檎さんはね、自分でチケット買って勘三郎さんの歌舞伎を見るんだそうだ。いつか何かで勘三郎さんがそう言っていた。林檎の音楽、哀しくてよかったなあ。
★笹野高史情報:前日、NHKラジオに出ていたのをたまたま聞いた。舞台、テレビ、映画と活躍しているが、本人は「映画俳優」と言ってもらうのが一番うれしいのだそうだ。それは、お母様が映画好きで、小さい頃によく映画館に連れて行ってもらったから、らしい。お母さんのこと、大好きだったんだね。俳優になったからにはいつか主役をやるぞと意気込んでいたのに、あるとき誰だかに「笹野君は脇で光る人だね」と言われたのだそうだ。その時は非常に落ち込んだということである。伝吉は主役ではないかもしれないけれど、主役に匹敵するくらいの重要な役であり、そして笹野さんはとても光っていたと思う。そういえば、笹野さんに何回か声がかかっていて、何屋って言ってるのかなと思ったら、「淡路屋っ」だったのね(淡路島出身だから)。遅ればせながら、このたび初めて笹野さんの屋号を知りました。
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